
浜松市の海に近い住宅地に建つ、この住まい。
周囲からの視線や強い日差しに配慮しながら、
室内では、光と緑を身近に感じて暮らせることを大切にしました。
外側は、焼杉と低く抑えた軒がつくる、
静かで落ち着いた佇まいに。
その内側には、吹抜けや高窓、
庭へとつながる開口によって、
明るさと奥行きのある空間が広がります。
ウッドフェンスと植栽、庇の出、
窓の高さや大きさを組み合わせることで、
外からの視線をかわしながら、
室内からは光と緑へ視線が抜ける関係をつくりました。
カーテンを閉めなくても、
庭の気配と光の移ろいを感じながら過ごせること。
閉じることと、ひらくこと。
その間に生まれる心地よさを考えた住まいです。

1|焼杉がつくる、静かな佇まい
外壁の焼杉は、家づくりの当初から希望されていた素材です。
一枚ごとに異なる深い表情を持ち、
海に近い地域では、耐久性を備えた外壁材として
古くから用いられてきた背景もあります。
その素材感を活かしながらも、
注文住宅としての外観が和の印象に寄りすぎないよう、
庇にはアルミを用いるなど、ミニマルなデザインコードも。
一階と二階の天井高も低めに設定し、
総二階でありながら、重心の低い佇まいに。
焼杉を強く主張させるのではなく、
周囲の風景に静かに馴染む外観を目指しました。

2|守られながら、庭へひらく
リビングの横長窓は、
あえて低い位置に設けています。
立っている時には外からの視線を受けにくく、
ソファに座ると、窓の向こうに庭の緑と空が見える高さです。
外側には、風を通しながら視線をやわらかく遮る
無垢のウッドフェンスと、季節を感じる植栽を配置しました。
植栽は窓の近くと庭の奥に重ね、
限られた距離の中にも、緑の奥行きが生まれるようにしています。
リビングと庭の間には、
庇の下に縁側を設けました。
室内でも庭でもない中間の場所を挟むことで、
庭までをリビングの延長として感じられます。
守られているのに、閉じていない。
カーテンに頼らず、光と緑のそばで過ごせる関係をつくりました。


3|低さと高さがつくる奥行き
この住まいでは、
一階の天井高を2,200mm、二階を2,100mmに抑えています。
空間を一様に高くするのではなく、
日常を過ごす場所には、身体に近い落ち着いた高さを。
その一方で、リビングには吹抜けと勾配天井を設け、
高さの変化によって、広がりと奥行きを生み出しました。
低い場所があるからこそ、
吹抜けへ視線が抜けた時の高さが、より印象的に感じられます。
吹抜けを横切る片持ち階段も、
上下階をつなぐだけの機能ではなく、
光や視線とともに空間をつくる要素として考えています。


4|暮らしの真ん中にあるキッチン
アイランドキッチンは、
リビングやダイニングだけでなく、
二階へ上がる家族の姿と、庭の緑まで見渡せる位置に置きました。
料理や片付けをしながらも、
家族の気配や外の変化を自然に感じられる場所です。
ダイニングから水まわりや室内物干しへと続く動線も、
日々の家事が無理なくつながるよう、コンパクトにまとめています。
家の中心にあるのは、単なる調理設備ではなく、
家族と庭、上下階の暮らしをつなぐ居場所です。


5|自然素材と、時間を重ねる
室内の床には、西南カバの無垢材を使用しました。
カウンターにも同じ樹種を用い、
壁と天井には、光をやわらかく受け止める
しっくいクロスを採用しています。
寝室の床には桧、
外部のウッドフェンスには無垢のセランガンバツを。
よく触れる場所には、
できる限り自然素材を選びました。
完成した時だけが美しいのではなく、
日々使うことで色や艶が変わり、
暮らしの時間とともに馴染んでいくこと。
焼杉も、無垢の床や木塀も、
その変化を含めて、永く愛着を持てる素材として選んでいます。

6|見えないところにある心地よさ
光や庭との関係だけでなく、
一年を通して、小さなエネルギーで快適に過ごせることも、
この住まいの大切な設計条件です。
周辺の建物まで含めた日照シミュレーションを行い、
窓の位置や大きさ、庇の出を検討しました。
冬の光は室内へ取り込みながら、
夏は直射日光が入りすぎないようにすることで、
高い断熱性能を活かしながら、室温の上昇を抑えています。
空調は、冬と夏でそれぞれ効率のよい位置から空気を送り、
床下、吹抜け、小屋裏を通して
家全体を循環させる計画です。
海に近く、湿度の高い環境も踏まえ、
夏型結露や雨仕舞い、将来の配線更新まで検討しました。
耐震性、断熱・気密性、耐久性、更新性。
普段は目に触れない部分まで考えることが、
日々の穏やかな心地よさにつながっています。

7|閉じることと、ひらくこと
焼杉に包まれた、重心の低い外観。
その内側には、庭の緑と光が入り、
吹抜けを通して上下階の気配がつながっています。
視線を遮ることは、
必ずしも閉じることではありません。
窓の高さや庭との距離、
庇やフェンス、植栽の重なりを考えることで、
守られながらも、外へ伸びやかにひらくことができます。
静けさと開放感。
自然素材と住宅性能。
日々の使いやすさと、時間を重ねる美しさ。
それぞれを無理なく両立させることから、
この住まいの心地よさは生まれています。
設計のポイント
・視線をかわしながら、光と緑へひらく窓と庭の設計
・低い天井と吹抜けの対比がつくる、落ち着きと奥行き
・家族の気配と庭をつなぐ、暮らしの中心にあるキッチン
・焼杉と自然素材による、時間とともに馴染む住まい
・日射、空調、耐久性まで含めた、見えない心地よさの設計
この住まいのような暮らしを考えている方へ
家づくりは、
明るく開放的にすることだけでも、
外から閉じて安心をつくることだけでもありません。
光や風、庭とのつながりを取り込みながら、
周囲からの視線や強い日差しには静かに配慮すること。
その土地の環境と、そこで過ごす人の感覚を重ねながら、
ひらく場所と守る場所を考えていくことが大切です。
岡本工務店では、
意匠や素材だけでなく、
耐震・断熱・空調・日射・耐久性まで含めて、
長く心地よく暮らせる住まいを考えています。
この住まいに共感していただけたなら、
これからの暮らしについて、ゆっくりお話しできればと思います。